販売取引の内部統制 | 契約の締結について考える

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これまでに観てきた会社の中には、ビジネス自体は素晴らしく、事業も成長している企業は何社もありました。

しかしその一方で、残念なことに販売取引の内部統制、特に契約書や注文書などのプロセスに問題があった結果、売上計上の期ズレや、売掛金滞留になり、計画未達成となってしまった、といった会社も沢山見てきました。

販売取引の業務フローのうち契約に関するプロセスは、会計(内部統制)の視点から取り組むポイントがいくつかあります。

そこで、このページでは、販売取引に関する内部統制のポイントとして、契約締結時の注意点について、経営と会計の視点から、思うこと考えることをコメントしました。


成長時の契約締結手続きについて内部統制上、留意すべき点とは

ビジネスが軌道に乗り始めた段階で、契約締結プロセスのうち、会計の視点から検討すべき点としては次のような事柄があります。

1.属する業界のビジネス慣行に合致した会計基準を採用できること

売上計上基準(収益認識基準)は、「出荷基準」「納品基準」「検収基準」などに大きく分けることができます。

まずは、貴社が属する業界で慣行となっている収益認識基準を採用できるような契約書の文言となっているかどうか、確認します。

例えば、「納品基準」を採用する場合には、モノを納品した時点で、所有権が顧客に移動していることが一つのポイントとなるため、契約内容に反映させます。

その他、許認可の制度が存在するような業界の場合には、業界特有の論点があります。このような点にも留意して契約書を検討する必要があります。

2.計画通りの時期・金額で売上計上し、代金回収できる内容であること

例えば、次のようなことがないかどうか確認します。

  • ・モノは納品したが、検収書がないと売上計上できない取引だった。
  • ・代金は入金されているが、サービスは今後、提供していく取引だった。

売上計上や資金繰りで計画とズレが生じてしまうことになりかねません。

従って、契約締結前には、計画通りに売上計上できるのかどうか、キャッシュを回収できるのかどうかを検討する必要があります。

3.取引先の経営状態は問題ないこと(=与信管理)

上記の点を留意して契約を締結したとしても、取引先の経営状態が良好でない結果、売上計上したとしても、代金未回収のままで売掛金が滞留してしまっては、元も子もありません。

契約締結前には必ず取引先の調査を行い、経営状態に応じて与信設定(取引の限度額を設定)することが望まれます。


販売取引の業務フローを経営(内部統制や会計)の視点から考えると

上記の留意点を検討せずに契約締結してしまっている原因は、「契約締結時の手続きに、会計視点での内部牽制が存在しない、または有効に機能していないから」ということです。

今回のテーマに当てはめて具体的に言うと、「会計に精通した人間が契約締結に参画していないから」ということに他なりません。

経理・会計の部門が、社内で単なる「事務屋さん」として認識されていると、なかなかビジネスに参画させてもらえません。

また、当の本人達が「自分は経理事務を行い決算書を作る人間」と自分自身を位置付けてしまっていれば、同じことでしょう。

1.業務プロセスレベルで検討すべきこと

契約締結時に取引先と交渉するのは、もちろん主役である営業部門の役割です。

しかし、販売取引の業務フロー上の中で、重要なプロセスである契約締結を検討する際には、「バックオフィスである管理部門(会計経理)とも連携して取り組み、管理部門も積極的に参加する」といった仕組みがあれば、会計視点の内部牽制が機能し、上述のリスクを低減する効果が得られる可能性が高まります。

(1)求められる内部統制手続き

契約書作成・締結という行為を真面目に取り組んでいる会社であれば、少なくとも次のような内部統制手続きが整備され運用されているはずです。

  • ・契約締結前には社内の稟議制度に従い、
  • ・適切な職務権限・業務分掌ルールの下で、
  • ・管理部門が審査した結果、承認が得られる

(2)さらに高レベルの内部統制手続き

さらに成熟した会社組織であれば、次のような内部統制手続きが存在するはずです。

  • ・契約書作成前である取引先との交渉段階で、社内の重要会議で進捗状況が説明され、
  • ・経理など管理側の人間から、経営管理視点での注意点について発言があり、
  • ・その発言内容について検討し契約書に反映させる、

このような手続きが、会社組織の中に組み込まれていれば、上述のような経営上の問題も契約書締結前に事前に発見(内部統制上の用語でいえば予防)することができるでしょう。

(3)内部統制の仕組みとして取り入れる

例えば、「稟議フォームの中に売上計上基準や売上計上時期、代金回収時期を設定する欄を設ける」「契約書フォーマットを作成する」などが考えられます。

但し、契約書フォーマットは、ベンチャー、成長企業の場合には取引先が大手である場合が多く、強制的に取引先の契約書フォーマットを使用せざるを得ない場合も少なくないでしょう。

そのような場合には、契約書上のポイントとなる点についてチェックリストをフォーム化しておき、契約締結者が自己チェックする仕組みとする、など会社の事情に応じて工夫できる余地はあります。

2.全社レベルで検討すべきこと

以上の内部統制手続きが存在しない会社ということは、「会計に精通した者=事務屋さん」という図式が成り立った、そういった社風の会社ということが考えられます。

※私の経験上でも、事業が拡大している会社では本当によくみられる図式です。

会社が軌道に乗っているときは何をしてもうまくいきますが、逆風がいつ吹くともかぎりません。

事業が成長している会社で上記のような社風であれば、上述の内部統制手続きを導入するかどうかはともかく、検討はしてみることをお勧めします。

全体のまとめ

以上、販売取引の内部統制のうち、契約締結プロセスについて、経営と会計(内部統制)の視点から、思うこと考えることをコメントしました。

まずは、どのような形でも構わないと思いますので、ビジネスを会計の視点から考えてみることをお勧めします。



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