原価計算の必要性 | 実務の視点から(成長企業向け解説)

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原価計算の目的は、「原価計算基準」に記載があります。

原価計算基準に記載されている原価計算の目的について要約すると、次の通りです。

1.真実の原価を集計すること
2.価格計算
3.原価管理
4.予算の編成と予算統制
5.経営の基本計画

なんとなく、「原価計算を導入した方がよさそうだ」、ということは分かりますがイメージすることが難しいと思います。

そこで今回は、原価計算を採用する必要性について、より具体的にイメージできるように、実務的な視点から、総合原価計算制度を採用するような業種に当てはめてコメントします。

これから資金調達を考えている成長中の中小企業には特に役立つはずです。


原価計算は事業計画(利益計画)の達成に必要

事業計画を策定する目的の一つとして、「経営理念に基づくビジョン(目標)を達成する」ということを挙げることができます。

そして、ビジョンの中には「利益計画の達成」ということも当然含まれているでしょう。

利益計画の策定には、「企業の実態を正確に反映した数値データ」が必要となります。

より具体的には、「適正な決算数字(実績)と比較するために同一ルールで作成した利益計画」、「日々のビジネスの結果としての実績数字を適切に把握すること」、「経営管理に役立つような数値の収集」、「適正な会計ルールに基づいた決算書の作成」といったことが前提となります。

そして、「企業の実態を正確に反映した数値データ」を把握するという目的を達成するためには、原価計算を採用することが不可欠ということになります。

売上高と粗利を正確に把握するには

なぜ、企業の実態を正確に反映した数値データを把握するという目的を達成するために、原価計算を導入することが不可欠であると言えるのか、より掘り下げて説明していきます。

利益計画上の数字で達成のハードルが高い項目は、売上高と粗利(売上総利益)です。

そして、「粗利 = 売上高 - 売上原価」であることから、「売上高と売上原価の計画数字を達成できるかどうか」が利益計画達成上の最重要課題になります。

ここで例えば、食料品や衣料品メーカーのように、複数製品を大量に製造しているような会社に当てはめて考えてみます(総合原価計算が採用されるケース)。

売上高の把握

まずは売上高。

売上高は、構成要素別に製品当たり単価(価格)と販売数量に分類できます。

そして売上高は、製品当たり単価(価格)は容易に想定できます。なぜならば自ら設定するものだからです。

それに対して、販売数量を予測することは難しい。

しかし、計画上の販売数量を達成するために顧客に製品を販売するための努力はどの企業も行っていることです。

従って、この点は今更、どうこう言うような話ではありません。門外漢の私がどうこう言える話でもありません。

売上原価の把握

次に売上原価。売上原価の構成要素として売上高と同様、製品当たり単価(製品原価)と販売数量に分けることができる。

売上高と違って、数量は簡単に把握できる。

なぜならば会計原則である、「費用収益対応の原則」によって、製品1単位が販売されれば、それに従って、売上原価も製品1単位分の金額が会計上、計上されることになるためです。

すなわち、売上高を計画するために販売数量が設定されれば、売上原価の数量=販売数量として必然的に計算できる、ということです。

それに対して、「単位当たり製品原価」、すなわち「製品1単位当たりを製造するためにかかったコスト」はどうか?。

これは結論から言えば、原価計算を導入していなければ算定することができません。


原価計算を採用しない場合に予測できる良くないこと

もし、原価計算制度は採用せずに簿記会計の範囲内で対応しようとするとどうなるでしょうか。

確かに会社全体で製品を製造するためにかかったコストは把握可能です。

しかし、「製品別にどれだけコストがかかり、製品1単位を製造するためにかかったコスト(=単位当たり製品原価)はいくらなのか?」といったことは「丼勘定」である以上、到底把握できるはずがありません。

ということは、「期末の棚卸製品がいくらあるのか?」といったことも把握できていない、ということになる。原価計算制度を採用していない企業は、実務上、非科学的な見積もりによって棚卸製品の金額を算定せざるをえない、ということになります。

見積もりで算定しているということは「恣意性が介入する余地が大きい」ということになります。

粉飾決算にもつながりやすいとも言えます。

また、製品別に単位当たり製品原価が把握できるような体制を構築運用していないのであれば、利益計画上の売上高にはコミットできても、果たして、「計画上の利益にコミットしていると言えるのだろうか?」といった話にもなります。

「利益計画上の売上原価の根拠はなんでしょうか?」、「利益計画上の利益を達成するためにどのような施策を講じますか?」、「製品のプロダクトミックスをどのように検討していますか?そのための参考データとして製品別の売上原価率を把握していますか?」

このような外部利害関係者からの質問には、満足のいく回答は決して用意できないでしょう。

事業が拡大してくるにつれ、ベンチャーキャピタルを始めとする株主や金融機関といった利害関係者は、より重要な存在になってきます。

これら利害関係者から求められるのは、売上高だけでなく利益です。利益を源泉としたキャッシュで利害関係者に還元や返済を行うわけですから。

まとめ

以上、利益計画の達成という目的の前提となる、「企業の実態を正確に反映した数値データ」を把握するためには、原価計算制度の導入が必要であるということを実務的な観点から説明しました。

利益計画の達成という目的には、冒頭に記載した原価計算基準に規定されている5つの目的が全て含まれていると言うことも分かって頂けると思います。

今回のように複数製品を大量に製造している業種であれば、「総合原価計算」を実務上、採用する必要がある、ということになります。



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