内部牽制について考える

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内部統制を知る上で、重要なキーワードの一つに「内部牽制(ないぶけんせい)」という言葉があります。

内部牽制とは、「会社の業務プロセスに複数人が携わることにより、不正や誤謬を未然に防ぐ仕組み」をいいます。

今回は、内部牽制について思うところ、考えるところをコメントします。

※内部統制(ないぶとうせい)については、「内部統制とは | 具体例で解説」にて詳細に解説しています。よろしければご参考ください。


内部牽制の概要

始めに、具体例や、役割および内部統制との関係、欠点と対応策など、内部牽制の概要について説明します。

内部牽制の具体例

例えば、伝票や見積書などの作成プロセスにて、作成者と承認者の2人が関わる、といったことが、内部牽制の代表的なケースです。

重要な書類関係は、内容が妥当かどうかや法令違反はないかどうか、文字誤りや計算ミスがないかどうか、などを確認すべく、作成者と承認者が役割分担する業務プロセス(すなわち内部牽制であり、内部統制)を整備して運用します。

このような内部牽制が社内ルールとして盛り込まれたものが、「業務分掌規程」や「職務権限規程」を始めとする各種規程です(J-SOX制度の業務フローチャート等のいわゆる3点セットももちろん含まれます)。

※J-SOX制度の概要については、「内部統制とJ-SOX制度について(前回からの続き)」にて解説しています。

内部牽制の役割と内部統制との関係

上述の例では、作成者と承認者が分担して業務を遂行すれば、不正やミスの防止に役立ちます。これが、内部牽制が業務プロセスに取り入れられることで期待される、主な役割です。

このような内部牽制を組織レベルや業務プロセスレベルで適切に導入することで、業務の有効性と効率性、法令順守といった、内部統制の目的を果たすことに大きく貢献します。

以上から内部牽制とは、内部統制が有効に機能するための仕組みの基礎となる部分ということができます。

内部牽制の欠点と対応策

内部牽制を取り入れるには、欠点の存在によって、正しく機能しない場合があることも理解しておく必要があります。

まず、内部統制は共謀に弱いことが挙げられます。

作成者と承認者が、いわゆる「グル」の状態では、内部牽制は有効に機能しません。

次に、完全な人間はいないということです。人間の能力には限界があるので、全ての不正・誤謬を事前に防ぐ、または事後的に発見できるわけではありません。

さらに、権力者には有効に機能しないケースがあります。

過去の粉飾決算の歴史においても、経営者や、大きな権限を有する者が粉飾決算の原因であったケースは散見されます。

他にも、有効な内部牽制が十分にルール化されていなかったり、又は定着していない場合にも有効には機能しません。

このような欠点による内部牽制(内部統制)の無効化を防ぐために、株主総会、取締役会や監査役会、各種会議体によるモニタリングが行われます。また、内部監査や内部報告制度、会計監査を始めとした外部監査人による監査や社会(世間)の評判といったものが存在し、「一定の効果」を得ています。


内部牽制について思うこと、考えること

上で、「一定の効果」と記述したのは、依然として粉飾決算に代表される不正事例が存在し続けているためです。

どの企業にも万能に有効に機能するような制度はない、というのが現実ということです。

それでは、「有効に機能するような解決策はないのか?」と言えば、その答えは、制度化やルール化が難しいところ、固い言葉で文章化することが難しい箇所にあるような気がします。

内部統制上の言葉で言えば、「統制環境(とうせいかんきょう)」と言われる部分に該当するのですが、J-SOX制度で利用されるようなチェックリストでは浮かび上がらないところです。

最も表現に相応しい言葉が「社風(しゃふう)」「企業文化(きぎょうぶんか)」でしょう。

社風や企業文化を分析していくと、企業とはヒトの集まりであり、人間学だとか心理学などといった分野にまで範囲が及び、またヒトだけでなくPCや業務システムなどのITも内部牽制の一部を構成していることから、システム工学や情報セキュリティといった分野も含まれてくる・・・、といったように、考え出したらキリがないのですが、到底、制度化、ルール化できるものではないのでしょう。

企業を構成するヒトを中心とし、業務外の時間も含めて相互に影響し合った結果として「社風」が醸造されます。

この「社風」を研究分析していけば、「不正を起こす企業なのかどうか?」ということが浮かび上がってくるのではないか。そんなことを考えます。

最近は、ITで「ビッグデータ」という言葉が流行っていますが、大容量データを分析できる現在であれば、「社風」を分析し不正を起こす傾向のある企業なのかどうか判定するといったことは絵空事ではないと思います。

既に研究しているのであれば、数値化など難しい点はありますが、興味があります。諸制度を補うデータとして有効に機能する可能性は十分にあるのではないでしょうか?

以上、内部統制について徒然なるままに思うところ、考えるところを述べてみました。



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