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内部統制とは 具体例で解説

全5回に分けて解説しています。理解の一助となれば幸いです。


内部統制とは J-SOXにこだわらずに考える


中小企業のIT投資状況と経営課題との関係について(その3)」で図を用いて説明しましたが、中小企業は経営課題の重要度として「信頼のある会社」を最重要課題として挙げています。

「信頼のある会社」を別の言葉で説明すると、いろいろと考えられると思いますが、
私は「内部統制が高い会社」だと考えております。

内部統制とは、いわゆる内部統制報告制度(以下、「J-SOX」)が日本で制度化されてから、世間でもよく聞く言葉となりましたが、何となくイメージできても、いまいちピンとこない方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、内部統制とは何か、現状の制度も引用しながら私なりの解釈で解説します。


注)内部統制報告制度(J-SOX制度)は内部統制のうち、「財務報告」を対象範囲とした制度です。今回の説明は、用語の概念を説明するものであり、J-SOXを説明するものではないことにご留意下さい。


※当事務所では「組織管理体制」という言葉をビジネス上、内部統制と同様の意味で使用しています。
内部統制=J-SOXといった世間のイメージがあることから、当事務所のビジネスを誤解して伝えることになりかねないためです。
以上から「組織管理体制」という言葉をビジネス上、使用しておりますが、内部統制は、当事務所ビジネスの根幹となっており非常に重要な言葉になります。


更新日:2016年6月5日
作成日:2012年3月25日
須藤公認会計士事務所
須藤恵亮

内部統制の定義について

  

内部統制報告制度(J-SOX)における内部統制の定義は次の通りです。

内部統制とは、基本的に、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内のすべての者によって遂行されるプロセスをいい、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング(監視活動)及びIT(情報技術)への対応の6つの基本的要素から構成される。

厳格な文書や会議では上記の定義で問題ありませんが、少し文章が硬くて理解するのに苦労します。そこで厳密な定義にはこだわらず、ブログや井戸端会議的にコメントすれば、内部統制は次の通り説明できます。

1+1=2になったり、3になったり、10になったり、0になったり、-10になったりすること。


【"1+1"とは】

会社がビジネス展開するためには、「ヒト、モノ、カネ、情報」といった「経営資源(リソース)」というものが必要です。
経営資源をどのような組み合わせ(配分)とするのか。組み合わせとは、単純に数字化すると「ヒト 5 モノ 3 カネ 3 情報 4」なのか「ヒト 2 モノ 5 カネ 4 情報 2」なのか、といったことを指します。極端な組み合わせでは「ヒト 10 モノ 1 カネ 1 情報 1」などもあるでしょう。
この組み合わせは経営者のビジネスへの思いや、ビジョン、目標、業界業種、現状の経済動向等に基づき検討して決定することになります。

また、そもそも経営資源をどのようなイレモノ(組織)に投入するのか考えないといけません。

  • ・トップダウンか、ボトムアップか。
  • ・ピラミッド型の階層的な組織か、役職は少なくしたフラットな組織とするのか。
  • ・取締役会や監査役会を設置するのか。
  • ・どのような部署を設置してどのような権限責任を付与するのか。
  • ・年功序列か成果主義か
  • ・アットホームな雰囲気なのか、ビジネスライクな社風にするのか
  • ・Etc

「組織」と一言であっても、検討する事柄はいろいろとあります。

さらに会社を組織として運営していくためには規程やマニュアルも必要となるでしょう。その種類や内容もビジネスや組織に応じて策定する必要があります。

以上のように、組織のデザイン的な部分や経営資源の配分といったことが上記の”1+1”の部分になります。「インプット」ということです。


【"=以降"について】

組織をデザインし経営資源を配分して実際にビジネス活動を行います。その結果、

  • ・会社の利益額、利益率、付加価値額、キャッシュフロー、流動比率といった財務指標
  • ・株価、時価総額、企業価値
  • ・世間の評判
  • ・金融機関や取引先の関係
  • ・従業員の残業時間
  • ・社内の人間関係
  • ・Etc

以上のことがビジネス活動の結果として現れます。このような「アウトプット」が"="以降の部分となります。


【まとめ】

以上の通り、内部統制とは、"1+1"から"=以降"の結果が出てくるまでの一連の会社の活動プロセスということになります。

また内部統制とは会社の活動プロセスのうち、特に「仕組み」に焦点を当てています。

会社(法人)はよく人間(自然人)に例えられますが、自然人と異なり、法人はそれ自体では活動できません。そこで法人の構成員たる自然人(=経営者、役員、従業員など)が法人の代わりに脳・手足・内臓・神経細胞・Etcとなって活動する。

「内部統制=自然人が法人のために脳・手足などの各機能の代わりとなって役割を果たすための仕組み」

ということもできます。

内部統制とは、会社のありとあらゆる活動が含まれるといっても過言ではないでしょう。

例えば、1+1=2であれば、何もしていない会社、1+1=3であれば評価できるが、例えば競合先が1+1=4であれば一歩遅れをとっているということ。1+1=10は高い内部統制レベルに達しているということ。1+1=0や-10は...。言うまでもありません(しかし、この時点では新しいことに取り組んでいる段階やチャレンジした結果ということであれば、1+1=2や3よりずっと評価は高い、という考えもできます)。

※ここでの数字化はあくまでも解説しやすくするためです(もちろん1+1=・・などという表現もJ-SOXなどの内部統制制度では行うわけがない)。ご留意ください。

【補足】冒頭のJ-SOX制度上の内部統制の定義にある通り、内部統制とは、6つの要素から成り立ちます。6つの要素のうち、内部統制と聞いて皆さんがイメージするのは「統制活動」かもしれません。
統制活動には「内部牽制」という考えが基礎となります。内部牽制については、「内部牽制について考える」でコメントしています。ご参考頂ければ幸いです。

更新日:2016年6月5日
作成日:2012年3月25日
須藤公認会計士事務所
須藤恵亮



内部統制を大局的視点で考える


「内部統制とは、会社のありとあらゆる活動である」と説明しました。

しかし、「概念的なことは分かったが、あらゆる活動って言われても。これでは何も言っていないのと同じことじゃないか」と思っている方もいるかもしれません。

そこで内部統制とは何か、具体的なケースを挙げて説明します(これまでのコラムでも説明していますが、J-SOXの解説ではありません。ご留意ください)。


【内部統制とは ケース1:会社全体の視点から考える】

A社とB社があるとします。この2社は同じ業種であり、会社の規模も同じ。ビジネスに投入できる経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)も全く同じです。

このように共通点が多い2社ですが、決定的に違うところがありました。それは組織体制です。組織体制が違うだけなのですが、2社がビジネス活動を行った結果、A社は”1+1=-10”と最悪の結果となってしまったのに対して、B社は”1+1=10”と高い成果を上げました。

どうしてこのような結果となったのでしょうか。組織体制を項目別に比較してみました。それが下の表です。

2社の比較その1

まず個別の項目、例えばNo8やNo9の項目でA社は良くないということは分かるでしょう。

しかし、全ての項目が悪いわけではなくむしろ良い項目もあります。No1の経営者のタイプはもちろん、No3やその他の項目もどこも悪いところはなさそうです。

それでは、A社はどこが悪かったのでしょうか?逆にB社はどこが良かったのでしょうか?

それは、項目全体をひっくるめて見た場合の「統一感」です。統一感という点でこの2社の評価は全然違ってきます。A社の組織体制は統一感に欠けているということがお分かりになりますでしょうか?

まずNo1 経営者のタイプを中心にして、その他の項目と照らし合わせて見て下さい。

A社の経営者は、経営陣や従業員の主体性を重視しています。にも関わらず、社風全体および経営陣が全体的に控えめな性格なので発言は少なく、また主体的に行動しない傾向となることが想像できます。
また経営陣や従業員が主体的に発言・行動しようにも柔軟性に欠けた会議運営や、計画策定がボトムアップではなくトップダウン主体であること、稟議制度がないことといったように主体的に発言・行動できない組織設計となっています。

また、業務分掌や職務権限があいまいであるにも関わらず内外部の情報の発信は各部署が行っています。情報が統一されず、内外、特に外部の人間が困惑するのは明らかでしょう。A社はビジネスが停滞したこと、また情報が錯綜したことで最悪の結果となってしまいました。

それに対してB社は組織に一体感があります。経営者の強力なリーダーシップの下、テキパキと物事が進むのが目に浮かびます。

以上の通り、A社とB社を比較しましたが、次にA社が10点、B社が-10点というケースも表にしてみました。下の表をご覧下さい。

2社の比較その2

B社では、経営者が自分の思い通りに進まず、ストレスがたまる組織体制であることが容易く想像できます。一方でA社は成熟した堅実な組織であることが一目瞭然です。

以上から内部統制とは、会社のあらゆる活動ではあるのですが、個々の項目といったことよりも「個々の項目のつながり(プロセス、関連)」のことを説明している言葉ということになります。そして、内部統制とは、個々や一部の内部統制の高い低いを評価するのではなく、個々や一部が集約された「会社全体」が高いか低いかを評価することが重要ということです(「個々の要素が有機的に一体となって機能する」といった言い方をします)。「木よりも森を見る」ということです。


【まとめ】

ここで例示した10点のA社、10点のB社の組織設計をそのまま当てはめれば、必ずうまくいく、というわけではありません。
組織体制というものは会社の業種や規模だけでなく、その時の会社の事業ステージ、また場所や時代によって千差万別で評価も変わるものです。今回は分かりやすいよう極端な評価となるよう解説しました。この点、ご留意ください。

以上、内部統制とは何か、全社的な視点から説明しました。次回は、個々の業務レベルでの内部統制について解説します。

更新日:2016年6月5日
作成日:2012年4月6日
須藤公認会計士事務所
須藤恵亮


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