自己紹介3 IPO準備業務-IT企業編

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前回、「自己紹介2 仕事探し編」で人材紹介会社経由で条件に合う会社を探し求めた結果、IT企業でIPO準備業務に従事することに。

※このブログは徒然なるままに右脳全開で感性のままに書いています。校正もほとんどありませんし、段構成など左脳で理論的に構成考えていませんので読みにくいかもしれませんがご理解お願いします。


会社概要

100名程の会社でITサービスを広範囲に展開。売上高は数十億円。

システム・アプリ開発の他、DB、セキュリティなどなど。

組織体制は「事業部制」。事業毎に事業部が存在。管理部門はスタッフ機能として各事業部共通に機能を果たす。

このうち、海外企業の買収で取得したソフトウェアプログラムのライセンスが、大手企業のある製品のOSミドルウェアとして採用された。

大手企業との提携はベンチャー事業におけるIPO達成ポイントの1つ。

既に大手証券会社の公開引受が入り、IPO準備を進めていたが、利益計画の大幅な未達や、管理上の問題点など、IPO達成には至らなかったため、新たな体制でIPOを進めようとしていた。

入社時の状況は以上の通り。

管理部門人員の入れ替わり

この会社の問題点の1つでした。私が在籍した1年8ヶ月の間に、なんと

13、4名

が退職したと記憶しています。

それ程、管理部門への風当たりが強かった。

だから私は長く在籍できた方なのです。2年に満たないのにw。

原因は

通常業務以外にIPO上の課題を解決する必要があったこと

です。

経理の課題はクリアしやすい

私は退職者の代わりとして、経営企画室長と経理部長を兼任することになったのですが、経理関係では

・監査法人からの指摘事項
・プロジェクト管理
・売掛金、与信管理
・月次決算の早期化

などが主な課題でした。

これらの課題は割と進めやすいのです。監査法人で培った実務経験からすれば、監査法人の指摘事項で課題が顕在化しているので難易度は高くないのです。

進めやすい最も重要なポイントは

社長や各事業部とベクトル方向が同じ

ということ。

資金調達にしろ、取引先への支払いや売掛金の督促、業績説明など、全社一丸となって進められるのです。

社内に障壁がない。IPO準備を進める上で最も重要と言えることだと思います。

これらの課題をクリアできたことが、私が長期在籍できた理由の1つです。

総務労務の課題が難関

これに対して総務の課題は次の通り。

・残業時間(現在のブラック企業レベル)の縮小
・契約書への反社会的勢力の排除条項の追加、その他反社対策
・偽装請負、二重派遣対策
・その他

これらの課題の解決は、むしろ、モロに事業推進を阻む要因になります。

どの事業部も売上目標達成のために残業は当たり前の社風だったのです。

反社条項の追加や偽装請負、二重派遣対策についても、契約の巻き直しやチェック作業になり、事業部側に負荷(時間も手間も、そして取引中止などのリスクも)がかかること。

従ってほとんど解決には至りませんでした。

このような理由から、総務部長は3名、管理本部長も2名の退職を目の当たりにしました。

今思うと酷い有様とは思いますが、一方で上記の課題を学びながら真剣に取り組んでいたのは各事業部とIPO旗振り役であった私だったのです。

どの総務部長も管理本部長もあまり、この点は取り組む姿勢はなかった。だから総務部長や管理本部長の入れ代わりは当然の結果という認識も持っています。

経理の課題には3名で解決

私と同時期に入社した部下2名と上記の課題に取り組みました。

ポイントは

金額の基準重要度高い所を優先して取り組む

です。

売掛金の管理(取引先別、プロジェクト別管理)にしろプロジェクト管理にしろ、伝票(仕訳)のうち、科目や、取引先、プロジェクトコードについては、金額的に細かいところは後回しや、部下に裁量を与える。もちろん支払や請求金額などは1円単位できっちり処理。

少しづつ精度が高まるので、段々と細かい所も見ていく。

その他、業務フローの作成や、月次決算スケジュールの作成と各部署への送付、月次決算手続きの進捗管理表作成と運用など、上場企業では当たり前のことについて、未整備の部分は整備し、運用がだめな所は改善していく。そして、各事業部とも粘り強く、腰低くしてコミュニケーションを取っていった結果、月次決算の早期化が実現でき、経理部の残業時間も大幅に減らせました(1人20-30時間は削減できたはず)。

経理2名の頑張りと各事業部の協力のおかげであったことは言うまでもありません。

買収海外企業株式(子会社株式)の減損

監査法人からの指摘事項のうち、最も金額的重要度が高かった事項。

冒頭に記載した、大手企業のある製品で採用されたソフトウェアプログラムのライセンスを保有する海外企業を買収して子会社化。

しかし、当該ソフトウェアの事業の業績が計画を大幅に下回る結果となったことから、単体決算の子会社株式を全額減損(評価損計上)すべき、と監査法人から指摘された。

買収1、2年の計画未達。これから事業を軌道に乗せるのであれば

「全額評価損計上は厳しすぎる」

という見方もありますが、IPO間近であったこともあり、経営者は強気の計画。

当該事業で大幅に利益増幅という、東証マザーズを視野に入れたエッジの効いた計画。

それが未達。それも大幅に(確か赤字だったはず)。

数年後のIPOを視野に入れた、緩やかな計画にしていれば、全額減損という指摘にはならなかったはず。

この点は、私も検討した結果、監査法人の指摘を受け入れるよう経営者に提案。

経営者も最終的に全額評価損の計上を決断したのでした。

この決断から15年以上が経過した現在。

たまにこの会社のHPで状況を確認しますが、件の事業の状況と照らし合わせると、あの時の判断は間違いではなかったと思っています。

銀行/VC折衝と資金調達

管理本部長と共に折衝に当たり、私はIPO課題の進捗状況や決算状況の説明や資料提出を担当。

結果、銀行やVCからの数億から5億円規模(だったはず)の資金調達に成功しました。

個人情報保護法を学ぶ

この会社では、IPO準備上の課題(経営管理事項)について、沢山のことを学び実務経験を積みましたが、偽装請負/二重派遣問題と共に現在の私に大きく影響を与え、今でも関心事であることに、

個人情報保護法

があります。

個人情報については人材紹介会社を使った仕事探し際にもストレスが溜まった理由でもあったのです。

この会社はプライバシーマークを取得しており、丁度、私の在職時に更新があり、私は「個人情報保護監査責任者」になったのです。

実務はほとんど個人情報保護管理者とコンサルティング会社で対応したのですが、この期間に書籍や資料で個人情報を学ぶことができました。

上場市場の選択

成長性の東証マザーズ(当時は大証ヘラクレスも)か、安定性のジャスダックか。

入社前の計画を見るに、先の買収ソフトウェアライセンスによるエッジの効いた事業を前面に押し立てているので、成長性をアピールしてマザーズ

しかし、経営者はリスク分散で様々なサービス事業を展開したいのが本当のところだったらしい。現在までの状況(HPより)も正にそんなところ。

これだとジャスダックの方がしっくりきます。

勿論、そのうち1つの事業で成長性が見込めるようであれば、東証マザーズも視野に、ということはあるかもしれませんが、

計画に一貫性がない

と、証券会社や将来の市場から評価されるのがオチだと思います。

IPOが幸せかどうか

上場すれば一躍有名になり、ストックオプションで大金持ちになれる可能性も。

しかし光が当たるのはほんの一瞬。株価が上昇を続けるかどうかも分かりません。

証券会社や監査法人をはじめ厳しく監視されながら自由を失います。

このような現状を考えれば、

ゾンビ企業と揶揄されながらも上場できない(しない?)ことの幸せ

を選択するのが、

名を捨てて実を取る会社

とも言えます。

私も現在では後者の選択を勧める1人です(より具体的には

上場企業を超える、形式のみではない実体ある内部統制を構築運用して不正のない会社として存続する」

です)。

IPO延期と退職

結局は、巻き直し後のIPO計画も、業績が伸びず収益計画の大幅な未達。

IPO計画は延期。

これを期に経営者との関係も悪化。ストレスもあり、経営者に暴言(私は正論と思っていますが)もあり、管理本部長(私からは3人目の)から諭され、辞表を書くことに。

2年に満たない期間でしたが、私個人としては、IPO実務を学べ、内部統制の構築運用や資金調達に貢献できたことに満足はしています。

ただし、また見切り発車の退職に。

次の会社探しを余儀なくされるのでした。

次回に続く。

公認会計士 須藤恵亮



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