工業簿記2級 能率差異(標準)の計算方法(公式)とシュラッター図(原価計算入門)

山積みになった大量の生産データの書類

今回は製造間接費の差異分析(能率差異、予算差異、操業度差異)について解説します。

種類別の勘定連絡図(個別、総合、標準)

クリックすると、実際個別原価計算、実際総合原価計算、標準原価計算それぞれの勘定連絡図(簿記2級で出題される典型的なケース)が別窓で開きます。

今回の学習はココ

原価差異(製造間接費の予算差異、操業度差異、能率差異)について学習します。工業簿記(原価計算)の種類でいうと標準原価計算の手続きに該当します。

標準原価計算とは、製品を標準原価で計算する原価計算制度をいい、原価管理の目的で採用します。

実際原価計算では把握できない数量差異や能率差異を把握することで、原価活動の能率改善に役立ちます。

標準原価計算(原価差額、差異分析)の計算方法(ズボンメーカーの問題を例に)

設例を用いて、標準原価計算の各論を解説していきます(前回解説した問1の解答を問題に反映させています)。

標準原価計算ではシングルプランとパーシャルプランといった2種類の記帳方法があるので、仕訳は別の回で問題を掲載して解説しています(下記の記事を参照)。

1.生産データ

仕掛品
月初仕掛品 200本(100本)完成品 1,500本(1,500本)
当月投入 1,800本(1,600本)
月末仕掛品 500本(200本)

2.原価標準

項目原価標準
直接材料費標準価格@120 × 標準消費数量@1枚 = 120円
直接労務費標準賃率@2,000× 標準直接作業時間@0.25時間 = 500円
製造間接費標準配賦率@1,440円 × 標準直接作業時間@0.25時間 = 360円
合計(完成品)@980円

※月間の基準操業度は450時間。基準操業度の変動費率は@480円 固定費予算額は432,000円である。

3.実際原価データ

項目原価標準
直接材料費225,700円(122円×1,850枚)
直接労務費798,000円(1,900円×420時間)
製造間接費630,000円(実際直接作業時間は420時間であった)

解答

解説1-製造間接費差異(予算、操業度、能率差異)と公式

今回は標準原価計算の製造間接費差異の問題ですが、実際原価計算でも製造間接費差異が登場します。

そこでは、与えられたデータより予算許容額を計算し、予算許容額、予定製造間接費、実際製造間接費という3種類の製造間接費から予算差異と操業度差異を計算する、といったものでした。

標準原価計算では、新たに「能率差異(のうりつさい)」が登場し、予算差異、操業度差異、能率差異の3つの差異分析を行います。

予算差異、操業度差異、能率差異の計算式(公式)は次の通り。

予算許容額の詳細な解説は下記の記事を参照。

解説2-能率差異から分かること

能率差異は、上記の計算式から「標準操業度 > 実際操業度」の場合に有利差異となり、「標準操業度 < 実際操業度」の場合に不利差異となります。

なぜならば、実際操業度が標準操業度を下回った場合には、それだけ「効率よく無駄のない製造活動を行えた」ということを意味するからです。

すなわち、能率差異とは文字通り、「能率の尺度である標準」の操業度よりも、どの程度、能率よく製造できたかが分かる原価差異といえます。

解説3-問題の解き方(公式)

公式に本問の数字をあてはめて予算差異、操業度差異、能率差異を求めます。

解説4-問題の解き方(シュラッター図)

予算差異、操業度差異、能率差異はシュラッター図を使用すると上の式を覚えやすくなります。

シュラッター図(標準原価計算-予算差異、操業度差異、能率差異)

※標準・実際・基準操業度は、数字の大きさに関係なくこの順番で記載します。実際原価計算のシュラッター図から標準操業度や能率差異が追加されている点が異なりますが、その他の書き方は同じです。

次の問題と解説

標準原価計算のシングルプランとパーシャルプランについて問題例を掲載しながら解説します。

今回までに解説してきた原価差異をどの勘定科目で把握して仕訳するかがポイント。

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