トップ

中小企業のIT投資について(前回からの続き)

今回は、「中小企業のIT投資状況と経営課題との関係」のデータ検証結果と統計データを用いることのメリットについて。理解の一助となれば幸いです。


統計データを用いて中小企業のIT投資状況と経営課題との関係を調べる

  

4.中小企業のIT導入状況と経営課題との関係

ここまで各図を分析してわかることを述べましたが、それではIT導入状況と経営課題の重要度の関係について見ていくこととします。

まずはIT導入状況(図2)の「セキュリティ」「HP(ホームページ)開設[会社紹介用]」「業務管理系アプリケーション」の各項目と経営課題の重要度(図3)で使用した各項目とを関連付けしてみました。それが次の表です。

IT導入状況と経営課題の関係

この表をみると、導入率が高い項目ほど、経営課題の重要度が高いことが分かります。正の相関関係にあるといえるでしょう。

【補足】2012年9月に日本商工会議所(独立行政法人情報処理推進機構作成)より「中小企業等のIT活用に関する実態調査調査報告書」が公表されています(上記グラフの更新版)。この資料に2012年度調査と2007年度調査の比較資料が掲載されています。該当箇所を抽出したものが下の表です。

IT導入状況と経営課題の関係

全体的に2007年度の方が重要と考える企業の割合が高くなっていますが、2007年度と2012年度で回答項目が異なるため、その点考慮が必要です。
比較した結果、大きく隔たりが見られるのが、「社員の採用(2007年度61.6% 2012年度84.3%)」と「社員のITリテラシ向上(2007年度70.1% 2012年度48.8%)」です。どちらも業務管理系アプリケーションと関係がある項目となっています(社員のITリテラシ向上はセキュリティとの関連があるとも言えます)。

景気回復が進んでいるので、社員採用の重要性が増していることは分かりますが、ITリテラシの重要度が大きく減少していることが気になります。
原因として考えられるのは、ここ1,2年でコンピューターウイルス(スパイウェア含む)が社会を賑わしており、社会的な重要度(=企業の社会的責任の重み)が増してきていることが挙げられます。
つまり、重要度の基準が2007年度と2012年度で異なっているのではないかと思います。セキュリティのIT投資はこの5年間でほとんど進まなかったが、セキュリティ自体の社会的な重要度が大きく増してきた、ということ。その結果、「振り返ってみるとあまり重要と考えていなかった」と考える企業が大きく増加した(=重要と考えていた企業が大きく減少した)ということが考えられます。
ちなみに2012年度調査で、ITリテラシの向上について「今後IT化する/さらに進める」と回答している企業割合は65.5%となっています。【補足ここまで】

2012年 3月17日
2014年 8月24日更新
須藤公認会計士事務所
須藤 恵亮

統計データの検証結果(まとめ)



5.まとめ

以上、長々となりましたが、まとめは次の通りです。

1)日本の中小企業は、経営課題の重要度が高い項目に対してIT投資を行っている。経営課題の重要度と整合したITへの投資行動をとっている傾向にある。

2)日本の中小企業は、2012年、2013年は、2010年よりもIT投資支出を抑えることが予測される。

従って「2012年、2013年は、より綿密に計画を立てて経営課題の重要度が高い項目に対して、コストをかけずにIT投資を行っていく必要がある」といえます。
図2と図3は4年ほど前のデータですが、現在とあまり違いはないと思いますのでこのまま使用しています(この点、客観的とは言えず、推察となりますがご了承下さい)。

【補足】2014年8月24日にデータ更新しました。2012年3月17日作成時から同様のデータを更新した結果、大きな変化はありません。景気回復は進んでいますがIT投資支出は控える傾向にあります。【補足ここまで】

また、次の点を記載しておきます。

3)客観的なデータに基づき分析を行ってみると、

  • @)分析前のイメージとは異なることがある。先入観を排除することができる。
  • A)社内外の第三者に対しても理論付けて説明することができ、説得力が増す。
  • B)文書化して記録として残しておける。

従って、客観的なデータに基づいた分析は、未来予測たる計画の策定には不可欠なものといえます。

以上、5回に渡り、中小企業のIT投資と経営課題の関係についてコメントしました。
貴社の「無駄にならないIT投資」の一助となれば幸いです。

2012年 3月17日
2014年 8月24日更新
須藤公認会計士事務所
須藤恵亮


【関連コラム・ページ】
競合他社のホームページを見て自社との違いを分析する
会社組織の中での会計と情報セキュリティの位置付け
Webマーケティングについて考える(その1)
コンピューターウイルスが社会問題になっています
事業計画の作成支援


戻る | コラム一覧 | 次へ

TOPへ戻る

Profile

  • Profile
  • 名前:須藤恵亮(すとうけいすけ)
  • 須藤公認会計士事務所代表
  • HP制作や情報セキュリティなど他とは異なるビジネスを展開している会計事務所です。
  • ・Home
  • ・事務所概要
  • ・ビジネス紹介

最近の記事(コラム)

・「不正な財務報告及び監査の過程における被監査会社との意見の相違に関する実態調査報告書」の公表について(日本公認会計士協会)
・新規株式上場(IPO)意向に関するアンケート調査(帝国データバンク)
・2015年度 コンプライアンス違反企業の倒産動向調査(帝国データバンク)
・「不適切な会計・経理を開示した上場企業」調査(東京商工リサーチ)
・国際会計基準(IFRS)に基づく連結財務諸表の開示例の公表について(金融庁)
・改正企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」の公表(企業会計基準委員会)-税効果会計
・有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項について(平成28年3月期以降)の公表(金融庁)
・有価証券報告書レビューの実施について(平成28年3月期以降)の公表(金融庁)
・「公認会計士・監査審査会検査の実効性の向上〜大規模監査法人を中心に〜」の公表について(公認会計士・監査審査会)
・株式の取得(子会社化)に関するお知らせ(TDnet)-連結財務諸表(資本連結)の改正について



関連リンク

会計入門〜実務に役立つ会計の入門
原価計算入門〜簿記資格の学習を支援
商業簿記入門〜2級、3級の資格学習を支援
会計ヘッジ|将来リスクを回避するためのサイト